チョコ煮

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いろんな素材をチョコで煮ます

読了:「生活臨床の基本」

今日読み終わったのはこちら。

生活臨床の基本

生活臨床の基本

 

 「生活臨床」というのは、1950年代末に群馬大学神経精神医学教室で始まった統合失調症に対するアプローチで、臺(うてな)弘(以下、敬称略)、江熊要一らにより考案されたものである。

生活臨床の特徴としては、

1.精神症状よりも日常・社会生活に重きを置いて多少症状があっても生活場面で安定して過ごせるように働きかけること

2.患者自身の「指向する課題」(患者の生活史や価値観から自身が望む希望。逆にこの達成が危ぶまれる状況に陥ると症状悪化・再発の危険が生じる課題)を重視して達成できるようにサポートすること

3.「指向する課題」を特定する参考として家族から聞き取りを行い、父母や祖父母などの先祖から引き継がれている、家として患者に課している問題を、家族史を作成することで明らかにしていくこと

などが大雑把に言うとあげられる(私としては3.はあまり聞いたことがなかったが)。

その過程で患者を「能動型」と「受動型」の生活類型に分類したり、「指向する課題」の一般例として「色・名誉・金」を挙げたりしている。

私が知っている生活臨床の知識は相当古いものだったので、本書が出版された2012年のバージョンにアップデートされている点が目新しかった。例えば就労支援や結婚支援などはかなり最近になってようやく注目されつつある分野に思われる。

生活臨床は心理療法的には家族療法やブリーフセラピーと似たところがあったり(するのかな?そこは私はよくわからないのだが)、福祉の分野だとACTに近い感じだったりする(のでしょうか?これもよくわからないんだが)ようで、古くて新しいアプローチとして取り組まれている様子。

ただし、一人の患者・家族に割くマンパワーは相当必要であり、診察に10分もかけられないような手一杯なところにまで浸透するかは今後の課題なのかもしれない(まあそのためにACTっぽくしてるんだろうとは思うけど)。

とまあ、偉そうに書きましたけど、薬物療法や従来の精神療法で難治の患者が劇的に改善する様子を症例として豊富に読むことができるので、勇気づけられる感じは確かにありますね。あと、病因論には立ち入らないので、精神病理学などで用いられる難解な用語は特になく、表現が全体的に平易でスラスラ読めます。