チョコ煮

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「シゾフレ~2つの視点から~」 第4回 (全9回)

【第4回】
1.私のケースレポート:浪人生時代~視線恐怖と対人恐怖~
2.本の紹介:「対人恐怖・醜形恐怖
3.コラム:薬の作用点・アゴニスト・アンタゴニスト
4.素朴な疑問:4年制薬学部って何を習うん?

※変更点:経歴と病歴を分けて書くのが意外と難しい、というか、話の流れ上、同じ所で記述したほうが読みやすいということで、経歴と病歴をまとめることにしました。

 

 

 1.浪人生時代~視線恐怖と対人恐怖~


無謀にも本命の大学しか受けず、見事に玉砕した私は引き続き予備校に通うことになった。しかし、いつまで浪人するのか、大学合格までどのくらいかかるのか分からない暗澹とした毎日を当時過ごしていた。

終りが見えないというのが非常に精神的につらい。
しかしそんな中、近くの席同士仲良くなったり、楽しそうにおしゃべりしたりする人もいるのが当時の私には信じられなかった。今考えてみると、そのように振る舞うことは精神の安定を図る一つの手段だと思えるが、私はもっぱら休憩時間は机に突っ伏して寝ていて、講義が終わったらさっさと家に帰っていた。

テキストの予習も結構大変だったし、人付き合いもうまくできない、今で言うコミュ障な自分としてはそのように振る舞うことは当然のように思えた。
たまに高校からの友人と会って近くのゲーセンに行ったりするくらいで、ほとんど他人との接点のない生活を送っていた。

私の苗字はあいうえお順で早い方だったので、座席指定の講義を受ける場合、結構前の方に座席のあることがしばしばあった。
それまではそんなに気にしたことはなかったのだが、浪人生活をしているとき、よく講師と目線が合うことが徐々に気になるようになった。
目と目があって、離れてそれでおしまい、というなら大したことはないかもしれないが、当てられるんじゃないか、とか何となく目線が合うのが恥ずかしいとか、思うようになり、さりとて座席は順番になっているので自由に席を選ぶこともできず、たまにキレたりする講師とも目が合ったりする。
こっちを見られるのが怖い(他者視線恐怖)のと、目があったときに緊張のせいで何となく睨みつけてしまっているのではないかということで、自分の視線が相手に不快感を与えているのではないかという不安(自己視線恐怖)を覚えるようになった。
と同時に隣に人がいるとどうしても視界に人が入る。大学の講義とかならそこまでギュウギュウに席が詰まっていることはないのだけれど、私の通っていた予備校では結構人がたくさん入っていた。
心理学で「パーソナルスペース」という概念があり、

他人に近付かれると不快に感じる空間
Wikipedia 「パーソナルスペース」2015/10/7閲覧)

というものだが、自分のパーソナルスペースも侵害されるし、相手のパーソナルスペースを侵害しているのではないかと思ってしまうし、だんだん人と物理的な距離を置くようになったのもこの頃だ。そんな感じで、徐々に他人が怖いという感覚が頭から離れなくなってきた。
ラッキーなことに浪人生活は1年で済んだので、多少心を病んだくらいで終わったが、この生活が何年も続いたら、と考えると未だに恐ろしい。

 

 

2.「対人恐怖・醜形恐怖

 

対人恐怖・醜形恐怖―「他者を恐れ・自らを嫌悪する病い」の心理と病理

対人恐怖・醜形恐怖―「他者を恐れ・自らを嫌悪する病い」の心理と病理

 

 
この本を最初に読んだのは大学2年の時だったと思う。大学の他学部の図書館にわざわざ行ってようやく借りることのできた一冊だ。
当時は精神分析も精神病理学も全く分からなかったので、該当の章の内容はほとんど分からなかったが、後にこの本を買って、今読み返してみても、すごく分かりにくい、というかやっぱり分からない。
……最初にネガティブな印象を与えてしまったが、この本は対人恐怖症と醜形恐怖症を精神病理学・発達状況・精神分析・集団精神療法など非常に多面的な視点から見て考察したものである。ただ、今おすすめできるかといえばちょっと難しいと思う。DSMはIIIだし、神経症という概念はもはや表立って使われることがなくなってしまったし。
当時としては価値があったのかもしれないが、昔も今も私がそれを査定するには荷が重すぎた。

 

 


3.コラム:薬の作用点・アゴニスト・アンタゴニスト


※ すでにお気づきかと思いますが、このコラムを読んでいただきたい方の中には理系の素養のない方も含んでおります。
やたらと内容が薄いとか、回りくどいとかお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、生暖かい目で見守ってください。


「くすりが効く」とは言いますが、当「シゾフレ」が統合失調症をメインに据えた記事であることを踏まえますと、とりあえず脳に効いているという点では異論はないかと思います。
ではもっと細かく見ていくとどうなるかについてですが、その前の総論的な話として、一般的にくすりはどこに効くのか、どんなふうに効くのか、について本コラムで書きたいと思います。

ただ、「どんどん細かくして見ていく」といっても、素粒子とか超弦理論の「ひも」とかの極小な世界までは行きません。
とりあえず生物の体内で起こっている反応はほぼ化学反応、つまり原子や分子のレベルです。「分子生物学」(という言葉、どっかの毛生え薬のCMに出てきたような気がしますが)という分子レベルでの生物学をベースに現在の薬理学は成り立っています。

詳しいことは分子生物学の本などをご覧いただければと思いますが、分子レベルでくすりが作用する対象となるのは、

・受容体
酵素
・膜輸送体(イオンチャネル含む)
・核内受容体

ということで、これらは全て、主にたんぱく質でできています。
(上5つは専門用語丸出しですが、それぞれについては適宜解説するつもりです。とりあえずそういうものがある程度に捉えてください)


2000年に発表されたアメリカの論文誌”Science”によれば、1996年現在での483種のくすりが作用の対象としているのは、
45%が受容体、28%が酵素、5%が膜輸送体、2%が核内受容体、20%がその他あるいは不明
とのことです(Science 287,1960(2000))。

参考:「京都大学大学院薬学研究科 生体機能解析学分野:研究概要」
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/channel/ja/research/channel1.html
2015/10/7閲覧


こうした報告を踏まえて、受容体や酵素などはくすりの「作用点」と呼んでます。

この中でさしあたって統合失調症などの精神疾患に密接に関係するのは、受容体とイオンチャネルとよばれるたんぱく質(の集合体)です。

受容体というのは、細胞表面にあり、他の細胞からのホルモン(インスリンとか成長ホルモンとか)や神経伝達物質ドパミンとかセロトニンとか)が受容体の特定の場所にくっつく(結合する)ことにより、細胞内部にその刺激を伝える、センサー兼通報装置のような役割をしています。

イオンチャネルというのは、これも細胞表面にあり、細胞内外にイオンを通す、出入口の役割をしています。
細胞表面には細胞膜がありますが、これは水と油の関係そのもので、イオン(一般にイオンは水溶性です)を通さない性質を持っているため、イオンの出入口として膜上にイオンチャネルが必要となります。

なお、イオンチャネル自体が受容体になっている場合もあります。
具体例で言うと、記憶や学習に関与する「AMPA型グルタミン酸受容体」というたんぱく質があるのですが、これにグルタミン酸という物質が結合するとイオンチャネルの部分の出入口が開いて陽イオン電荷がプラスのイオン)を細胞内に通す、という仕組みがあります。

さて、受容体には生体内でもともと結合する分子が存在しており、その分子が受容体に結合します。このもともと生体内にあって受容体に結合する分子を「内在性のリガンド」(「リガンド」は「くっつくもの」という意味)と呼びます。
しかし、リガンドとなるものを人工的に合成し、生体の外から受容体に送り込むことができます。この人工的なリガンドが「くすり」というわけです。
内在性のリガンドの場合、受容体に結合すると細胞内部にその刺激を伝えるセンサー兼通報装置機能が働くのですが、人工的なリガンドが受容体に結合した場合、その機能が働くとは限りません。センサー兼通報装置機能を働かせず、リガンドの結合する場所を塞ぎ、内在性のリガンドが結合できないようにしてしまう場合があります。
その一方、人工的なリガンドとはいえ、受容体に結合して内在性のリガンドと同様に細胞内部に刺激を伝えさせるものもあります。
「くすり」のうち、ただリガンドの結合場所を塞ぐだけのものを「アンタゴニスト」、内在性のリガンドと同様の働きをするものを「アゴニスト」と呼びます。
日本語だと「アンタゴニスト」=「拮抗薬」、「アゴニスト」=「作動薬」と呼びます。

以上、ちょっと長かったですね。お疲れ様でした。



5.4年制薬学部って何を習うん?


座学については基本的に「広く浅く」です。ただ、化学だったら有機化学、物理だったら量子化学や熱力学・統計力学、生物だったら分子生物学や発生生物学などというような研究室で何を研究しているかによって濃淡があることは否めません(うちの大学だけかもしれませんが)。
あとはそう言った基礎科目を足掛かりに、生理学、薬理学、薬物動態学、分析化学、天然物化学、薬物代謝学、製剤学、病理学、微生物学、生物統計学、毒性学、公衆衛生学、薬事法、特許法、etc……。
といった感じです。一応、臨床薬学とか創薬科学なんてのもあったような気がします。
6年制と何か違うかといえば、やっぱり臨床系の科目が少ないことでしょうか?あと、彼らには「コアカリキュラム」があったり、CBTやOSCE、さらに国家試験があるのですが、研究室にいた同期の6年制の人は実習で数か月研究室に来られなかったこともありました。




以上、ご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。