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チョコ煮

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読了:「うつの8割に薬は無意味」

日常 日常-読書

 

うつの8割に薬は無意味 (朝日新書)

うつの8割に薬は無意味 (朝日新書)

 

 なかなか過激なタイトルですが、内容は門外漢の私でも読める内容です。

「うつ」と書いてありますが、広義のうつ病、広義の双極性障害について書かれています。

以下、起承転結に無理やり当てはめますが、現在治療中の方は読まない方が良い、いや、読んではいけません。原著をあたるべきです。

 起

抗うつ薬は2割の人にしか効かない。これは精神科医の間では常識。医師としては「2割効くなら使うべき」派がおそらく大多数。ただ著者としては「だから抗うつ薬は使うべきでない」とも「だから抗うつ薬は使うべきだ」ともいわない。ただ事実を知ってほしい。

精神療法の技術を欠いた精神科医は薬物療法で治そうとするしかない。いわば善意で「治してあげたい」と思うからこそ薬漬けにしてしまう。

新型うつ病」が社会問題化したが、問題なのは「うつ病かどうか」ではなく、「休職・自宅療養が必要かどうか」。「病気だが働けるうつ」もある。

うつ病患者が1999年を境に急激に増加しているが、「悩める健康人」が「疾患喧伝(しっかんけんでん。薬ではなく病気を宣伝する)」に踊らされたことによる。当時、製薬会社はSSRIの販促のため、うつ病啓発(「心の風邪」など)を行った。

その後の研究で、抗うつ薬は軽症うつ病に対しプラセボより優れていないとの結果が出て、抗うつ薬礼賛の時代は終わった。SSRIが過大評価された要因として、出版バイアスと副作用の過小評価の2つがある。

製薬会社も精神科医も「患者が薬を求めたから」という釈明を用意しているので、薬漬けにされないためには両者を全面的に信頼してはならない。

うつ病に関するストレス応答、とくに免疫系の動きはわかっているので、今後、非感染性の慢性炎症性疾患として捉えられることになるだろう。ただ、脳科学が進歩して正確な診断ができるようになっても正確な治療ができなくては意味がない。

うつ病新型うつ病ができたように、双極性障害にも双極II型が「発明」(発見ではない)された。「『うつ病』ではなく、『双極性障害』です」と医師に言われたら、それは薬剤変更または増量を意味し、必ずしも患者自身に良い結果をもたらすとは限らない。

双極性障害(I型やII型)は睡眠・覚醒リズムの失調および飲酒による睡眠の質の低下が重要と著者は考えており、

1.断酒

2.睡眠相(睡眠パターン)の安定

3.睡眠量の確保(1日7時間超の睡眠)

を続ければ、気分変動は後からついてくる。毎日、睡眠日誌をつけ、モニタリングするとよい。

だが、薬が必要な疾患も確かにあり、双極性障害(I型)や統合失調症については薬を使わざるを得ない。

また、I型の人の場合、療養指導についても比較にならない、きめの細かいモニタリングと素早い介入が必要である。

SSRIの登場、疾病喧伝のほかにもう一つ、「街角のメンタルクリニック」が急増したが、医療の質にばらつきがあり、精神科医にかかるのは今やギャンブルである。また、精神科医は患者の社会的問題には無力なので、家族が支援することが望ましい。

企業が真に求めている人材は「毎日休まず会社に来てくれる人」である。一般的な3ヵ月休職の診断書を出しても復職に怖気づき、増薬してイチからやり直しというパターンが長期休職→退職をもたらしているのではないか。

「うつ=激励禁忌」は都市伝説に過ぎない。回復期のリハビリ中はむしろ励ましが必要である。

うつ病は、自殺さえ回避できれば、決して「死に至る病」ではなく、憂うつそのものは正常な情緒的反応である。うつも不安も不眠も人生にはつきもので、しかも時間が解決してくれる。「主治医が何をしてくれるか問うのではなく、自分が自分のために何ができるか問うてください」

 

精神科医にできることには限りがあります。

薬は万能ではありません。

人生の主役はあなた自身です。

もっとも、精神科医は「まるで役立たず」ではありません。

自分自身が主役である、ということを忘れない限り、微力ながら支援させていただく所存です。

時の流れがすべてを洗い流してくれるその日まで。

感想

上に書いたのはほんの上っ面を撫でた程度なので、ぜひ原著にあたることをお勧めします。要約が長くなったので感想は短く言いますが、他に類を見ない内容であることは確かです。軽症うつ病は断酒と睡眠の安定こそが問題であり、気分変動は後からついてくるというのは目からウロコですね。

 

長文失礼しました。